003 どのドローンスクールを選べばいいの?と悩むビギナーが知るべきこと
ドローンパイロットのなかには、航空法にある”3つの空域”と”6つの飛行の方法”に該当する飛行をさせたいと考える方が多いようで、実際に改正航空法が施行された2015年12月10日から2016年12月9日までの1年間で、国土交通省は12,300件の申請(事前相談を含む)を受け、10,120件の許可・承認を行っています。*1
その許可・承認申請には「無人航空機の飛行経歴並びに無人航空機を飛行させるために必要な知識及び能力*2」として、次に掲げる知識及び能力があることが必須であることは「002 ドローンを飛ばすために厳守しなければならない航空法の真実」で書かせていただきました。
(1)飛行を予定している無人航空機の種類(飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船のいずれか)別に、10時間以上の飛行経歴を有すること。
(2)次に掲げる知識を有すること。
a)航空法関係法令に関する知識(無人航空機に関する事項)
b)安全飛行に関する知識
・飛行ルール(飛行の禁止空域、飛行の方法)
・気象に関する知識・無人航空機の安全機能(フェールセーフ機能 等)
・取扱説明書に記載された日常点検項目
・自動操縦システムを装備している場合には当該システムの構造及び取扱説明書に記載された日常点検項目
・無人航空機を飛行させる際の安全を確保するために必要な体制
・飛行形態に応じた追加基準
(3)飛行させる無人航空機について、次に掲げる能力を有すること。
a)飛行前に、次に掲げる確認が行えること。
・周囲の安全確認(第三者の立入の有無、風速・風向等の気象 等)
・燃料又はバッテリーの残量確認
・通信系統及び推進系統の作動確認
b)遠隔操作により飛行させることができる無人航空機の場合には、a)の能力 に加えて、GPS(Global Positioning System)等による位置の安定機能を使用することなく、次に掲げる能力を有すること。
ア)安定した離陸及び着陸ができること。
イ)安定して次に掲げる飛行ができること。
・上昇 ・一定位置、高度を維持したホバリング(回転翼航空機に限る)
・ホバリング状態から機首の方向を 90°回転(回転翼航空機に限る)
・前後移動・水平方向の飛行(左右移動又は左右旋回)
・下降 c)自動操縦により飛行させることができる無人航空機の場合には、a)の能力 に加えて、次に掲げる能力を有すること。
ア)自動操縦システムにおいて、適切に飛行経路を設定できること。
イ)自動操縦システムによる飛行中に不具合が発生した際に、無人航空機を 安全に着陸させられるよう、適切に操作介入ができること。なお、操作介入が遠隔操作による場合には、b)の能力を有すること。*2
航空法などの関係法令に関する知識や、安全飛行に関する知識については『ドローンの教科書 標準テキスト(ドローン検定協会発行)』などの関連書籍を購入して独学で習得することも可能ですが、ドローン(無人航空機)を飛行させるための技術を修得することは、ドローン未経験者にとって困難です。
上文によると「無人航空機の種類別に10時間以上の飛行経歴を有すること」とあります。「001 ドローンがビジネスコンテンツとして期待できるホントの理由」にも書きましたが、航空法では、機体本体とバッテリーの合計重量が200g未満のものを”模型航空機”とし、200gを超過するものを”無人航空機”と定めています*3から、機体本体とバッテリーの合計重量が200g未満のトイドローンやホビードローンと呼ばれている”模型航空機”による練習時間は”10時間”に含まれないでしょう。
また”飛行経歴”という言葉を辞書で調べると、飛行=「空中を飛んで行くこと」、経歴=「今までの履歴」とありますから、飛行経歴=「空中を飛んでいた今までの履歴」という解釈が妥当であり、他人がドローンを飛行させているのを見学したり、飛行前の準備などの時間は「10時間以上の飛行経歴」には含まれないでしょう。
たとえばドローンスクールで、受講生5名に1機の割合で教習機を準備し実技実習を行う場合とすれば、最低でも50時間以上の実技実習時間を設けないと「10時間以上の飛行経歴を有する」ことはできず、許可・承認申請を行うことはできません。さらにドローンの飛行経験がないビギナーに、いきなりドローン(無人航空機)を操縦させることは危険ですから、先ずはトイドローン(ホビードローン)から練習しましょうとなれば、その教習時間も加算されるはずです。
せっかく高額の受講料を支払ってドローンスクールに通ったのに、許可・承認申請を行うことができず、人口集中地区での飛行や夜間飛行をすることができなければ、プロドローンパイロットとしてビジネスをするのは難しくなります。ですからプロドローンパイロットを目指す方がドローンスクールを選ぶのであれば、受講生5名に1機の割合で教習機を準備して実技実習を行うスクールでは「50時間以上+トイドローン練習時間」の実技実習時間があるか?あるいは、受講生1名に1機の割合で教習機を準備して実技実習を行うスクールでは「10時間以上+トイドローン練習時間」の実技実習時間があるか?を確認する必要があります。
POINT ❶ 2015年12月10日から2016年12月9日までの1年間で国土交通省航空局に12,300 件の許可・承認申請があった
POINT ❷ 許可・承認申請をするためには200gを超過するドローン(トイドローンは含まれない)でのフライト経験が10時間以上必要
POINT ❸ 受講生5名に1機の教習機で実技実習を行うスクールは「50時間以上+トイドローン練習時間」の実技実習がないと修了後、許可・承認申請はできない
*1 引用 2017年3月23日初版発行『ドローンビジネス調査報告書2017』株式会社インプレス 発行
*2 引用 平成27年11月17日制定(国空航第 684 号、国空機第 923 号)『無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領』国土交通省航空局 発行
*3 参照 平成27年11月17日制定(国空航第 690 号、国空機第 930 号)『無人航空機に係る規制の運用における解釈について』国土交通省航空局 発行