019 ドローン大学校の理事長はドローンのことを誰よりも知ってるわけではありません。

驚いたことに日本には1,000校くらいのドローンスクールがあるそうです。グローバルでは中国にドローンスクールがありますが、アメリカやヨーロッパのドローンスクールのお話は聞いたことがないので、アジア特有の存在なのかも知れません。その中で世界一ドローンスクールが多い国が日本かも知れません。警察庁「運転免許統計*」によると、クルマの教習所は平成元年に1,314校あるらしく、それと比較すると明らかに「飽和状態」であることが分かります。

 

それらのドローンスクールの中には、YouTubeで集客を行っているスクールもあり各校の校長さんがそれぞれの想いを伝えています。先日YouTubeを見ていたら「僕は誰よりもドローンを知っていないといけないと思っています」と、あるスクールの校長先生がおっしゃっていました。正直、僕は誰よりもドローンのことを知っているわけではありません。農薬散布に関してはドローンで農薬散布を行う会社を起業された修了生さんにはかなわないし、測量に関しては測量士の修了生さんにはかなわないし、物流に関してはドローンで物流を行っている企業に転職された修了生さんにはかなわないし、空撮に関しては映画・CM・MVの空撮シーンの撮影をされている修了生さんにはかなわないし、あらゆる分野で修了生さんにはかないません。でもそれで良いと僕は考えています。

 

僕が尊敬する方のおひとりに「佐藤久夫先生」がいらっしゃいます。NBAのワシントン・ウィザーズからドラフト一巡目9位で指名を受けた八村塁選手の出身校である明成高校時代のバスケットボール部のコーチです。ワシントン・ウィザーズへの入団が決定した直後に、八村塁選手が真っ先に電話で報告をした相手です。佐藤久夫先生はその後のインタビューで、指名されたあとに本人から電話があって「先生のおかげです。感謝しています」と言われて「そんなことないから、それは言うな」と押し問答のような電話になってしまったけど「これはスタートだから」と言ったら本人も「ここから頑張ります」と、コメントされていました。それに対して、八村塁選手は高校卒業時に「高校ではバスケの技術もそうですけど、バスケの考え方や男としての態度とか、心の部分をものすごく学びました。」と答えています。これこそが僕が目指す講師と受講生の関係です。

 

良い指導者は、技術やスキルを伝える前に「考え方・態度・心の部分」を伝えるべきです。教育学者のウィリアム アーサー ワード(William Arthur Ward)は以下の言葉を残しています。

 

The mediocre teacher tells. The good teacher explains. The superior teacher demonstrates. The great teacher inspires.

 

凡庸な教師は指示をする。良い教師は説明をする。 優れた教師は範となる。偉大な教師は内なる心に火をつける。

 

指導者たる者は「内なる心に火をつける」つまり「受講生をやる気にさせる」ということを主眼にするべきだということです。誰よりもドローンを知るために情報収集するヒマがあったら、自ら「考え方・態度・心の部分」を学び「受講生をやる気にさせる」ためにはどうすれば良いか?を考えるべきです。そうすれば情報を与えずして、自ら情報を得ることができる人間に成長します。八村塁選手と佐藤久夫先生のやり取りを聞いてそう感じました。

 

* 警察庁「運転免許統計 令和元年版」https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/menkyo/r01/r01_main.pdf