010 いまドローンを導入したビジネスがイマイチ盛りあがらない本当の理由
「ビジネスに活かそうとドローンを始めたにも関わらず、一向にドローンでお金儲けができない」または「リサーチ会社が発表した日本国内のドローンビジネスの成長率を見ると伸びる市場であると書かれているにも関わらず実感が感じられない」・・・こんな言葉を聞くことがあります。
確かに、ドローンをお仕事にしようとドローンを始められた方で、新たにドローンビジネスをスタートされたり、ドローンの操縦技術をアピールして華々しい転職をされる方は珍しい存在なのかも知れません。では何故そんな矛盾が生じるのでしょうか?
ところでお話は変わりますが、ボクの恩人のおひとりに、株式会社オウケイウェイヴの兼元謙任 代表取締役社長がいらっしゃいます。このOKWAVEという会社は「互い助け合いの場の創造を通して、物心両面の幸福を実現し、世界の発展に寄与する」というMISSIONに沿って、日本初、最大級のQ&Aサイト「OKWAVE」の運営を行う会社です。
数年前、ボクが新規事業を立上げ、売上が上がらなくて悩んでいた時、その兼元社長が「この本を読むといいよ!」と言って一冊の本を手渡してくださいました。それは、アメリカのマーケティングコンサルタント ジェフリー・ムーア(Geoffrey Moore)が書いた『キャズム(原題: Crossing the Chasm: Marketing and Selling High-Tech Products to Mainstream Customers 「深淵を越えて: 主流顧客を対象としたハイテク製品の市場調査と販売」)』という本でした。この本では、新しい革新的なIT技術を売り出す際のマーケティング手法を提案していました。
新しい技術が好きで実用性よりも新技術が好きなイノベーター(innovators)、新しい技術によって競合相手などを出し抜きたいと思っているアーリー・アドプター (early adopters)、実用主義で役立つなら新しい技術でも取り入れたいと思っているアーリー・マジョリティー (early majority)、新しい技術は苦手だがみんなが使っているなら自分も使わなければと思うレート・マジョリティー (late majority)、新しい技術を嫌い、最後まで取り入れないラガード (laggards)と、購買層には5つの階層があり、その間には乗り越えなければならない溝があり、さらに各階層が明確な比率によって構成されているという概念を解説した本でした。
さらに、アーリー・アドプターとアーリー・マジョリティーの間に、価値観が大きく違う大きな溝(キャズム)があり、それを乗り越えられるかどうかが、その製品が普及するか、一部の新製品マニアに支持されるにとどまるかどうかの一番の鍵であるという、いわゆる「キャズム理論」が解説されていました。
この本によると、まだ誰も使っていない新しいモノだからこそ、他の多くの人よりも一歩進んでいることに価値を感じて購入しようとするアーリーアダプター(イノベーターを含む初期市場)と、大勢の人が使っているという安心感があって、時代に取り残されたくない思いから購入しようとするアーリーマジョリティ(レイトマジョリティを含むメインストリーム市場)では、購入にあたっての価値観が全く異なり、つまりハイテク業界において流行を積極的に取り入れる層は「新しさ」を求め、流行を消極的に取り入れる層は「安心感」を求めるので、2つの層は価値観が全く違うと論じています。そしてこの理論は、ライフスタイルを変えるようなハイテク市場や、全く新しい分野の商品について当てはまりますが、反対に成熟した市場には該当しないと指摘しています。
どうですか?すでにドローンを始めている方なら分かると思いますが、ドローンビジネスは、いま「キャズム理論」のキャズム(深淵)に到達したのかも知れません。つまり、順調に成長する”黎明期”ではなく、一時的な”衰退期”と言えるのかも知れません。であれば、しばらく続くキャズム(深淵)を理解し、「新しさ」ではなく「安心感」を追求するビジネスを創造することが必要だとも言えます。
ドローンビジネスを悲観的に語りドローンの可能性を摘み取るのではなく、来るべきメインストリーム市場に向けたビジネスを準備することが、これからドローンビジネスをスタートされる方に求められる時期に到達したとボクは考えています。