007 ドローンの民間資格が役立つ意外な場面とは?
2017年2月18日午前10時ごろ、神奈川藤沢市でドローン(小型無人飛行機)が工事現場の空撮中に墜落し、30代の男性作業員の顔に激突し、顔を数針縫うケガをしたと、国土交通省が明らかにしました。この事故はドローンの飛行ルールを定めた改正航空法が2015年12月10日に施行されて以降、初めて報告された人身事故と報道されました。
しかし、これは”人身事故”として国土交通省に報告された最初の事故であって、実際に救急車の出動要請や警察の現場検証がなければ、わざわざ国土交通省に報告することもないでしょうから、実際に起こったドローンによる人身事故は計り知れないことでしょう。
ところで、私が理事長を務める”一般社団法人 ドローン大学校”には、既に2〜3年前からドローンによる空撮を業務とするプロドローンパイロットが入校されてくることも珍しくありません。特に最近では、大手の制作会社の社員であるプロドローンパイロットが企業派遣というカタチで入校されてきます。「既に2〜3年もドローンの実務経験があるのに、何故いまさらドローンスクールに入校されるんですか?」と質問すると、帰ってくる回答は概ね2つです。
ひとつ目の理由は「屋内などの非GPS環境での撮影依頼が増え、非GPS環境での操縦技術を高めたい」という回答です。2015年5月中旬にDJI Phantom 3 Professionalが国内発売されましたが、そのころDJIのドローンは100万機の累計出荷を突破し、ドローン空撮を業務とされる方が増えました。DJI Phantom 3 Professionalには室内などGPSが受信できない場所でも安定したホバリングを可能にするための超音波センサーが追加され、高さを高精度にとらえ飛行を調整することで同じ場所に留まることができる”VISION POSITIONING”という機能が搭載され、高度な操縦技術がなくともドローンを操縦することが可能になりました。ところが、たとえ”VISION POSITIONING”という機能が搭載されても、モニターに頼ることなく狭い場所で目視による飛行をさせようとすると簡単なことではなく、その点を補完したいということです。
ふたつ目の理由は、2017年2月18日の神奈川藤沢市でのドローンによる人身事故のような報道が増えるほど、放送局や広告代理店のようなドローンによる撮影業務を発注する立場の企業から「ドローンによる撮影業務には民間資格と、屋外の業務においては国土交通省の日本全国包括許可の提示を求められるケースも増えているので民間資格が必要なんです」という回答です。
確かに、救急車の出動要請や警察の現場検証が入る事故が起こった場合、業務依頼主である放送局や広告代理店担当者も事情聴取を受けることもあるでしょう。その際に「なぜこの企業またはパイロットに業務依頼をしたんですか?」と問われた際に「民間資格または国土交通省の日本全国包括許可を確認し、業務に必要な操縦技術を習得済みだと判断した」と的確な回答をしたいと考えるのは当然のことだと思います。
「ドローンによる事故は起こらないでほしい」と強く思いますが、ドローンによる事故が起きるほどドローンの民間資格への需要が高まるというのは、何とも皮肉なものです。
POINT ❶ 2017年2月18日午前10時ごろ神奈川藤沢市で発生したドローンによる事故を改正航空法施行以降初の人身事故として発表。
POINT ❷ 2〜3年の実務経験のあるプロドローンパイロットでも非GPS環境での操縦技術向上を目指しドローンスクールに入校するケースもある。
POINT ❸ ドローンによる事故が増えるほど民間資格と、国土交通省の日本全国包括許可の提示を求められるケースが増える。
*1 引用 Wikimedia Commons( https://commons.wikimedia.org/wiki/File:救急車の鏡文字_(7248884750).jpg )